最後に撮影に関することを少しだけ書きたい。
それは「自然の摂理」について。
・星撮りは運次第
今回の撮影でつくづく思ったのは「満天の星空を写せるチャンス」がいかに少なく貴重なものかということだ。
撮影に向かう前に天気予報を調べるのは当然だが着いてみると必ずしも予報どおりとは限らなかった。
予想外に雲が多かったり撮り始めは晴れていても急に雲が沸いて来たり薄い雲が掛かったり濃い霧が発生したりして星が見えなくなることがよくあった。
しかし、せっかくここまで来たのだし晴れるかもしれないと信じて最終列車まで毎回粘るのだが報われないことの方が多くその時の疲労感はすごかった。
・星の大敵
月の存在も大きかった。
特に満月は想像以上に明るくその光で星がマスキングされてしまう。だからきれいな星空を撮りたければ新月の日がベストだが、「新月で雲ひとつない快晴」などという好条件に恵まれることはめったにないのだから与えられた条件の中でいかに撮るか、しかない。
だが月は一晩中空に輝いているわけではない。つまり月の出の前と月が沈んだ後は新月と同じ条件で撮る事ができる。
問題は限られた本数の列車が鉄橋を通過する時間帯にそうなるかということ。理屈はわかっても都合よく行かないものだ。
・天の川
星を撮る時、気になる存在は天の川だ。
今回も構図の中に収めたかったが残念ながら方角が違っていた。
天の川は肉眼では淡く見える程度で決して明るくはないので、今回のような橋の照明や列車のライト、そして沼田町自体が発する光害という最悪の環境を考えれば美しく撮ることは難しかっただろうと思う。
しかし今回は天の川についていくつか学んだことがある。
それは天の川はいつも見えるのではなく季節によって見える方角や向きが変わるということ。中でも垂直に空に立ち上がる天の川のドラマチックな姿を撮るならお盆頃が最適という情報は実に大きな収穫で今年の夏はぜひ撮ってみたいと思っている。
・最大の収穫
こうした経験から「思い描いた写真を撮るため」には「自然の摂理」を知ることがいかに重要かということを学んだ。
星に限らず自然や野生動物を撮るなら必須だと思う。これから学ばねばならない課題がたくさんできた。
これが今回の撮影を通して得た最大の収穫だったかもしれない。
・タイトルの由来
最後に「111歳の夢」というタイトルの由来を書いておこう。
・111歳とは
留萌本線が開通したのは1910年。
去年は2021年なので開業111年。だから「111歳」。
・初めての大冒険
母の実家は留萌だったため夏休みや冬休みには必ず遊びに行った。
小学二年生頃の夏休みに三歳下の妹と二人だけで汽車に乗って留萌のおばあちゃんに会いに行く事になった。
・お兄ちゃん頑張る
妹の手を握りしめるボクの手は極度の緊張でじっとり湿っていた。
最大の難関は深川での乗り換え。神居古潭を過ぎ次は深川だ。緊張感はピークに達する。
しかし親切な人たちに助けられて無事、函館本線から留萌本線に乗り換えることが出来た。
駅を通過するたびに二人で母のメモを確認し残りの駅の数を数えた。
留萌駅におばあちゃんの姿を見つけた時はなんとうれしかったことか。走って抱きついたことを今も覚えている。
ボクにとってまさに初めての大冒険の舞台が留萌本線だったのだ。
・急激な衰退
留萌は昭和30年代初めにニシン漁が急激に縮小した。同時に留萌本線の周囲にあった石炭などの鉱物資源も枯渇。急速に力と勢いを失っていった。
留萌は今もドライブでよく訪れるが街はすっかり寂れシャッター街となっている。昔の賑わいと記憶の中の面影はなくなってしまいいつもとても寂しい気持ちになる。
・風前の灯
今、留萌本線はJRの合理化で廃線の危機に瀕している。
すでに留萌市は廃線に同意し、かろうじて沼田町と深川市が廃線に抵抗しているという。まさに風前の灯。
・オマージュ
ボク自身思い入れの強い留萌本線が消えてしまうのはあまりにも寂しい。
だからこの「111歳の夢」は111年の長きに渡って多くの人々の夢や希望を運び続けた「留萌本線へのオマージュ」なのだ。
・なぜこの写真?
前述したとおり、この作品は決して「優れた写真」とは思わない。しかし自分の思い描いた「留萌本線へのオマージュ」というテーマにもっとも沿った表現だと思ったのだ。
作品としては稚拙だがボクの愛すべき代表作として思い出深いものになるだろうと思う。
・忘備録としての余談その1 巨大流れ星
9時の列車を撮り終えて旭川に向かう途中、緑色に光る大きなものがフロントガラスの右上から突然現れた。かなりの大きさだったので飛行機かと思ったがまもなくその光は途中で消えた。たぶん大きな流れ星だったのだろうがあんなに大きな流れ星を見たのは初めてだった。
・忘備録としての余談その2 UFO?
あと数分で列車が来るため両手にリレーズを持って待ち構えていた。その時、鉄橋の左上に何かが見えた。
丸く白いものが5つ連なってふわふわと飛んでいた。それは、まるでサンショウウオの卵のように透明で柔らかいもので包まれているように見えた。
大きさは着陸間近の飛行機。かなり大きいので最初は飛行機かと思ったし連なるものは窓だと思った。また鉄橋との対比から高度はかなり低いと思った。
唖然としUFO??と思い撮りたかったが列車はすぐ来るのでカメラを三脚から外すわけにもいかず、かといって両手はリレーズで塞がっていたからスマホを取り出すことも出来なかった。
まもなく列車が来たので一瞬目を離しすぐ振り返ったがその物体はすでに見えなかった。
もし撮れていればスクープ級だったと思う。
興奮冷めやらず直後に報告した友人は「スターリンク衛星ではないか」と言った。「なんだ。人工衛星か」とがっかりしたが地上から写したという写真を見る限り今回のものとは明らかに違う。
一体あれは何だったのか今も不思議だ。
・ミステリースポット沼田
この二つの出来事はそれほど間を置かずに起きたので沼田近辺はボクにとって今やミステリースポットとなっている。
・感謝
長々とした駄文を最後まで読んで下さった皆さんに感謝してこの記事を終わります。ありがとうございました。
Soul & Mind Relaxation · Deep Sleep, Calming, Relaxing and Soothing Music(Check links on bio to download free music)
あらためて写真を眺めていたら妙なことに気がついた。
「白の光跡」は鉄橋の中を通過してるけど、その下を走る二本の「赤の光跡」が鉄橋トラスの外側を走っている。これは何なのでしょう?
それにしても、良い写真ですね。
JR北海道はこの写真を買い上げるべき。
パルプタウン様
赤い光跡は車体下部の赤いライトだと思います。
だからトラスの外を通ってることはないかと。。。
もしかしてやっぱり沼田はミステリースポット??
お褒めいただき恐縮です(^^
もしJR北海道で買い上げてくれたら旭川に招待します!
もちナメタ付きで!!
赤いライトだけ途中から見えてますね。
これは左から右に向かう電車を撮ったので最後尾の赤いライトが写ったのは列車が橋の途中まで進んでからだからですね。
写真から受ける印象では左側へ登っていくように見えますがこういう部分を見ると撮った時の様子がわかります。
111歳の夢の4作、拝見いたしました。写真を撮るということをこれほど真剣に撮られている方が、どれだけいるでしょうか?私などはこの記事を読んで恥ずかしくなりました。
昨日ある写真展に行ったとき「星野道夫展」を開催していたので見てきました。以前もみたことがありますが、この方の写真も感動します。写真を撮るということ、なんか考えさせられました。
コメントありがとうございます
ボクなんてたいしたことないですよ。この時はこうやったとちょっと偉そうに書いただけです。詳しい方が見たら当たり前のことばかり。こんなに時間掛けて読ませやがってと怒ってはるかも…まぁ忘備録ですから(^^)
星野道夫さんですね。調べてみます。
星野道夫さんのことネットで調べました。
NHKのBSで見たことを思い出しました。おっしゃるとおり素晴らしい写真ばかりですね。
会場で実際に見たら感動すると思います。近くにいて羨ましいです。
やはり素晴らしい写真はどんなに被写体が小さくてもスッと見せたいものに目が行きますね。
こういう写真をいつか撮りたいものです。