111歳の夢_2

・撮影開始

本格的に撮影を開始したのは7月も終わりに近づいた頃だった。

半袖シャツにジーンズ。7時半近くまで夕焼けの色がキレイに残っていた。

・どんどん早くなる日没

しかし8月に入ると目に見えて陽が短くなりこれまでは6時台に美しかった夕焼けやブルーモーメントは5時台へと変わった。
お盆を過ぎる頃には6時半にはかなり暗くなりフォトコンの締め切り間際の10月初旬には5時を過ぎると真っ暗になった。

定点で定時刻に20回近く撮影をしたことはなかったのであらためて季節の移り変わりの早さにあらためて気づいた。これは今回の大きな収穫の一つだった。

・新たな構想

暗くなるのが早まると共に満天の星空が頭上に広がりその下を列車が通過する。その瞬間を撮りたいと思った。

・ひとりぼっち

暗闇の中一人でいるというのは怖いものだ。前は川、後ろは土手で草茫々、その向こう側は広い水田だから少なく考えても周囲1km以内に誰もいない。。いつ川岸を歩いてきたヒグマと遭遇するかもしれない。

聞こえるのは川がゆったり流れる音とカエルと虫の鳴き声だけ。突然その静寂を破るような奇声が轟いてビックリ!アオサギの鳴き声だと思うが暗闇の中で聞くとさらに恐ろしかった。

もしここで倒れても翌日農家の人が車を発見してくれるだろうとは思ったが心細さは半端なかった。

・不安定な足場

護岸ブロックの斜面には平らなところはほとんどない。片足が精一杯。しかも泥だらけなので座るところも椅子が置ける場所もないので3時間近く立ったままだ。一度ビニールを敷いて座ったが立ち上がるのが大変で諦めた。

・手強い敵

日が落ちると急激に気温が下がるので膝まである冬用のベンチコートや手袋は必須。

しかし季節は夏。

何度もジーンズの上からデッカイヤブ蚊に刺されたので蚊取り線香を焚き、上から下まで防虫スプレーを掛けまくった。しかしそれでも掛け方が足りなかった靴下やズボンの裾のわずかな隙間を狙われた。膝の裏側も彼らの攻撃対象になり冬用のオーバーズボンに長めの靴下を履き膝下まである長靴で完全武装した。ヤブ蚊恐るべし!

・急げ急げ!

半袖から、これだけの重装備に着替えるのはなかなか大変。田んぼの畦道に止めた車のそばで着替えるのだがのんびりしているとヤブ蚊と蛾の格好の餌食となるし油断していると車内にも彼らは侵入するので本当に忙しい。

・おさらい

さぁ服装をもう一度おさらいしよう。
1.膝まである防寒仕様のベンチコート。ポケットには防寒用の手袋と指先を温めるためのカイロも入れた。
2.マスク
3.右手の人差指と中指の先を切った薄手の農作業用のゴム手袋着用。
4.ジーンズの上から冬用のオーバーズボン。
5.長くて厚い靴下を履き膝下まである長靴。

仕上げに全身に防虫スプレーをこれでもかとボク自身が死にそうになるくらい掛けまくる。

・出発

フードを被り首から懐中電灯を下げ二台のカメラをたすき掛けにして二台の三脚を抱えリレーズなどの小物一式が入ったジュラルミンのケースを肩から下げて出発。
誰かが見ていたら南極越冬隊員かと思っただろう。

リュックタイプのカメラバックはないのかと思った人もいるでしょうね。あることはあるんです。PeekDesignの立派なのが。。でも一度だけ護岸ブロックの上にビニールを敷いて使った時に泥で汚れたので、それ以来もったいなくて使えなくなったのです。。まぁ3時間背負っているわけにもいきませんけどね。

・コケた

高く生い茂った土手の斜面を降りて行く。草の上に長靴が乗るとメチャ滑るから何度か滑り落ちた。しかも足に引っかかると抜けなくなってつまづきそうになるから横向きに恐る恐る下っていく。

暗闇の中、実際何度かコケたがこの格好でコケると起き上がることすら難しい。草が顔に倒れて来て泣きたくなる。
この時点ですでに結構息が上がって来る。マスクはウザイがヤブ蚊ちゃんよりはマシかと我慢する。

・スリル満点護岸ブロック

やっと護岸ブロックまでたどり着いたものの暗闇の護岸ブロックは怖い。懐中電灯があってもよく見えない。ここで転んだら川へ落ちるのだからスリル満点❗

・デブは大変

やっとポイント到着。三脚のセッティングに取り掛かる。
これもまた護岸ブロックのせいで簡単ではない。しっかり設置しないとカメラもろとも川に落ちてしまう。
しかも構図は下から見上げて星空を大きく入れたいのだから極力低くしたい。

出っ張ったお腹が邪魔して苦しい。。
一台目のセッティングが完了する頃には防寒コートの中は汗だらけだ。。

・イライライライライライラ。。。

そしていよいよカメラのセッティング開始。
OLYMPUS E-M1 MarkⅢはスムーズにセッティング完了。
ところがSONY α7Ⅲにリレーズの端子を挿そうとするとL型ブラケットと干渉してうまく行かない。暗闇の中、口に懐中電灯を咥え格闘するも、ついに諦めL型ブラケットを外し端子を差してから、またL型ブラケットを取り付けることを強いられた。

・手暗がりとMVP

しかも懐中電灯を口に咥えて照らすと手暗がりになって黒いカメラと黒いコードが見えない!
困り果てて星撮りの人ご愛用の赤く光る小さなヘッドライトをAmazonで購入した。
コレ角度も変えられるし安いのに明るさも十分!2021年度のMVP候補だ。

・またまた問題勃発

カメラも三脚になんとかセット完了。さぁ構図を調整しようとするとまたまた問題が。。
SONY α7Ⅲの背面液晶はバリアングルではないのでヨコ構図ならまだしもタテ構図で低い位置だとまったく使えない。。。イライラx3
結局、iPhoneとWi-Fiで接続して画面を見ながら調整するものの片手じゃなかなかうまくいかんのよね。。。汗
元々バリアングル液晶のOLYMPUS E-M1 MarkⅢの優秀性を再実感。もちろんE-M1もスマホとWi-Fi接続できるがスマホは一台しかないんだから。。

・夜露よ今夜もありがとう

やっと撮れる状態になったものの、この撮影ポイントは川の横ということもあって夜露がひどい。着ているものもカメラもレンズもすべてがベチャベチャに濡れる。

・結露

寒さと夜露で一番困ったのがカメラの放熱によってレンズが結露してしまうことだった。あっという間に曇ってまともに写せなくなる。

・救世主

この現象は真夏の美瑛でも経験済みだったのでレンズを温めるレンズヒーターの必要性は痛感しつつも使用頻度を考えると購入を躊躇していた。

しかし今回の撮影では必須のアイテムだったので思い切って一本購入した。

その効果はまさに絶大で撮影終了までの三時間一切レンズが曇ることはなくなった。

ただ1本を二本のレンズで使いまわそうと考えていたのだが二本とも同じ頃曇る。しかも購入したレンズヒーターはSONYの神広角レンズ15-35mmには使えるもの出目金の神レンズOLYMPUSの8mmフィッシュアイには専用品でなければ使えないことがわかり結局追加購入となった。しかしその効果を考えれば買って大正解だった。

それにしても先達のなんとしても写したいという執念が生み出した知恵や工夫は凄いものだとあらためて思った。

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「111歳の夢_2」への3件のフィードバック

  1. BERUMOONさま

    おっかしーでしょー(^^
    まぁ多少オーバーに脚色した部分もありますがほとんどが一人暗闇の中での悪戦苦闘です。
    今となってはいい思い出だし次に活かせる貴重な経験だったと思います。

  2. 大変な思いをしながらの撮影で、読んでいて可笑しくなりました。
    だけどこんな素晴らしい写真が撮れたから何も言うことはありませんね。
    素晴らしい作品だと思います。

    1. ありがとうございます。気づかず返信遅くなって申し訳ありません。
      今回の撮影はマジ大変で今思い出しても笑っちゃうシーンがたくさん思い出されます。
      コレでダメだったら泣くだろうなと思いながら撮ってましたし…
      だからホントはアイデア賞で最優秀賞が欲しかったので通知が来てもあんまりうれしくなかったんです。でも写真としては納得いかなかったので少し諦めはつきました。
      いろいろやって突き詰めるのも面白いし貴重だなと思った経験でした(^^)

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